お茶目な本に出会う

見た目がシブく製本されたこちらの本は、鍬形蕙斎(くわがた けいさい)という江戸時代の
浮世絵師が描いた生き物たちのカット集です。
略画式とあるように、対象の特徴は押さえたまま残りは上手に省略してサラサラっと表現、
この省略の仕方が何とも上手い。基本の絵が出来ているからなんでしょうが、
それにしてもよく観察してるな~、と感心します。

イヌ・ネコに限らず、動物の後ろ姿に何とも言えない愛着みたいな
感情が湧く私ですが、彼も同じ類の人間だったのでしょうか。
本の中には、いくつもの動物の後ろ姿が出てきます。
右側のシカの後ろ姿なんて、哀愁漂うようでたまらなく好きです。
なんかもう、小突きたくなる。

カラスに関してはどうなんでしょう。
描き方が微妙に違います。
右側の真横姿のカラスは尾を下げて前に屈んで鳴いているように見えます。
その傾向があるのはハシボソガラスです。が、ここで描かれている姿は
嘴が湾曲気味でおでこが出っ張っているのでハシブトガラスっぽく見えます。
細かいツッコミ(笑)
正確でなくても違いに気づいて描き分けようとしていたのか、ただ単に技法を
変えていただけなのか。
真偽の程が分からなくても、こうして眺めているだけで気分が柔らかくなります。
時々、本棚から出してはページをめくり、かわいぃな~、とつぶやく事でしょう。