物が語るから物語

ノーライトデザイン、札幌にあるアウトドア用具を制作している会社です。
数ある製品の一つであるスノーシューは、一台一台手作り。
現在はその生産を止めてしまったため、新たに手に入れるのは難しくなりました。
先日、こちらの工房にお邪魔して、ここに至るまでの物語を聞いてきました。

 

スノーシューが日本に入ってきたのは、二十数年前。
当初は、アウトドア系の雑誌に取り上げられたりして、にわかに脚光を浴び始めたものの、
どのスノーシューも高価で一般にはまだ敷居が高いものだと感じていたそうです。
ならば自分たちで作ってみようと、見よう見まねで作り始めたのが最初。
遊び心で作り始めたスノーシューは、友人、知人と利用の輪が広がっていく中で、
生活・日常道具として使われて欲しいという想いが膨らみさらなる物作りへ。
「子供こそ好んで雪の中に入っていくけど、大人になったら森に行って
雪と触れ合うことなんてなくなるでしょう。そこを結ぶ道具として普及させたかった。」
そんな事をおっしゃってました。
痺れます。


スノーシューではなく「西洋かんじき」と表現しないと通じにくい場面こそありますが、
それでも、色んなメーカーから多種多様なスノーシューが出回り、道内のホームセンターでも
販売されるようになった今「俺の役目はもう終わったんだ。」なんて格好良いこと言います。

 

独立する前、組織に所属していた時に知り合い、何度かお邪魔しているこちらの工房。
もうここで新たなスノーシューが作られる事はないのかぁ、と思うと寂しく、
「作り始めた時はね、試行錯誤の繰り返しでね・・・」なんてお話にも聞き入ってしまいます。

最後に無理をお願いして、一台、購入させてもらいました。
身長の割に足の小さい私のために、ちょこっと修正。
職人が使う道具にも手業にもいちいち「格好良い」とつぶやき、付きまとう私。
この方の語りを聞くのと仕事姿と出来上がっていく製品を見てるのが好きなんですね。
ひどく邪魔でしょうけど。

 

なんだかんだと、無事入手。
子供のように「やった~」と口走り、嬉しさ余って小躍りしそうになりました。
機能性、耐久性、デザイン、どれも大事な要素ではありますが、
想いが込もったこちらのスノーシューは、何にも代えがたい愛着が私にはあります。
大事にいっぱい使いますよ。